根管治療をして神経がないはずの歯がずっと痛いのはなぜ?
香川県 高松市の噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫です。
根管治療をして神経がないはずの歯が半年以上も痛み続けている
という患者さんが来院されました。
患者さんにとって非常に負担の大きい治療のひとつとして
歯の神経を取る治療(根管治療)というものがあります。
一般的であれば歯の根の治療(根管治療)中は治療中、
そして治療後もずっと痛みが出てしまうことはよくあります。
そして吉本歯科医院に毎日のように寄せられるご質問が「歯の神経を取っているのにどうして痛むのでしょうか?」というものです。
歯の神経治療をした後の歯の痛みに関して実際に私が診療室で患者さんにお話ししている内容をお伝えしていきます。
歯には大きく分けて2種類の痛みがあるんです。
①歯の神経からくる痛み。
②歯の周りからくる痛み。
この2つは同じ痛みでも根本的に感覚が違います。
神経組織の構造が異なり、歯の神経からくる痛みはピリッとする、
とか鋭い痛みなどと表現されます。
歯の周りからくる痛みは「歯がうずく」とか「鈍い痛み」というように表現される患者さんが多いです。
ただ痛みの表現は個人差があり、痛みを伝える言葉も個人によってそれぞれですのであくまでも目安です。
矢印の部分が
神経・血管と言われる部分です。
ここは神経組織と顎骨から動静脈が栄養された組織になります。
この部分は冷たいものを食べた時などは歯髄にその刺激が、「キーンとしみる~~」というような痛みを感じます。
虫歯になると歯に穴が開くことで歯髄への距離が近くなり、痛みをより感じやすくなります。さらに穴が深くなると歯髄にまで及んでしまい刺激が直接伝わり、ズキンズキンとした激痛を伴った痛みが出たりします。
ズキンズキンとした強い痛み、脈打つような痛みが出た場合には
残念ながら歯の神経を抜く治療(抜髄)、歯の根っこの治療をと言われる根管治療の対象になることが多いです。
上のイラストの歯槽骨は歯を支えている骨です。
歯槽骨を覆うように歯根膜という歯と歯槽骨の間に介在するクッションのようなものがあります。
歯茎も含め歯の周りのぜんぶの組織をまとめて歯周組織と言われています。
歯周組織に病態が生じたものは一般的に「歯周病」と言われます。
口の中の歯の汚れや磨き残し、硬くなった歯石が原因で炎症が起こり
歯肉→歯根膜→歯槽骨へと向かうものが辺縁性歯周炎と言います。
歯の根っこの中に細菌感染が生じ、歯根膜、歯槽骨へ炎症が波及したものが根尖性歯周炎と言います。
歯の神経を取ったのに噛むと痛い
疲れると歯がうずく感じがする
というのはこの歯周炎が原因である可能性が一つ目としてあります。
歯周炎になると患者さんご自身の体調の影響で
「疲れていたり睡眠不足が続くと歯がうくず」
ということがあります。
つぎに根尖性歯周炎についてです。
根尖性歯周炎とは虫歯が大きく、根管内も感染し、炎症が歯槽骨まで波及した状態です。
歯の神経を取る治療を行っても、実は根管内の菌を100%ゼロにすることは難しいのです。
実際は取り残した神経の残骸が残ってしまい、残った菌が根尖部で悪さをして炎症を引き起こすことはよくあり。
歯の中にある神経すべてを取りきることは人間の手では不可能です。
歯の神経はクモの巣のように無数に張り巡らされているものです。
教科書やイラストではくっきり3本か4本程度に表現されていますが実際はクモの巣のように無数に張り巡らされているのが歯の神経です。
大きな太い神経に取り残しがあると当然痛みが残ります。
歯の中にある神経すべてを取りきることは人間の手では不可能です。
菌がそこにある限り痛みは続きます。
細菌を殺すことができれば痛みはウソのように治まります。
歯の神経を取ったはずの歯がずっと痛むという場合はまずはご相談下さい。
香川県 高松市 噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫。歯学博士。放送大学講師。歯を削らない治療・歯を抜かない治療・咬み合わせ治療を軸に診療を行っている。
吉本彰夫
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