同じ歯を何度も治療していませんか。「削って詰める」をくり返すと歯に起こること
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「この歯は、もう何度治療したか分からない」
「詰め物を入れ直すたびに、詰め物が大きくなっていく」
「きちんと治療してもらっているのに、また同じ歯が虫歯になる」
同じ歯の治療をくり返している方は、決して少なくありません。そして多くの方が「自分の歯みがきが悪いのだろうか」と思っておられます。
同じ歯が何度も悪くなるのは、あなたのせいではありません。そこには、治療をくり返すたびに歯が弱くなっていく「しくみ」があるのです。この記事では、そのしくみと、くり返しを止めるために確かめたいことをお伝えします。
治療のたびに、歯は少しずつ小さくなる
虫歯の治療では、虫歯になった部分を削り取り、その穴を詰め物で埋めます。これは多くの場面で必要な、標準的な治療です。
ただ、歯は一度削ると、元には戻りません。そして詰め物を入れ直すときには、古い詰め物を外し、その周りの歯もあらためて削ることになります。治療をくり返すたびに、詰め物は大きくなり、残っている歯は少しずつ薄くなっていきます。
くり返しの先に起こること
同じ歯の治療がくり返されると、多くの場合、次のような順番で進んでいきます。
- ① 小さな詰め物
- ② 再発して、大きな詰め物
- ③ 削る量が増えて神経に近づき、しみる・痛む
- ④ 神経を取る治療(根管治療)
- ⑤ 土台を立てて、被せ物
- ⑥ もろくなった歯が割れる(歯根破折)
- ⑦ 抜歯
- ⑧ 失った歯を補うブリッジの土台の歯が、負担に耐えられず割れる
- ⑨ さらに歯を失い、入れ歯へ

とくに大きな分かれ目になるのが④です。神経を取った歯は、栄養や水分が届かなくなり、枯れ木のようにもろくなります。その先にあるのが、歯が割れて抜歯になる、という結末です。
→ 神経を取ると歯に何が起こるのか:https://www.kagawacsw.jp/2020/07/28/歯の神経を取るとどんなことが起こるのか?/
→ 歯根破折で抜歯と言われた方へ:https://www.kagawacsw.jp/2022/02/25/歯根破折と診断を受けた方へ/
なぜ、治療した歯がまた虫歯になるのか

お口の中には、想像以上にたくさんの細菌がいます。虫歯を削り取ったあとの歯にも、細菌は残っています。
そのため、詰め物や被せ物で封をする前の処理がとても大切です。残った細菌を減らし、歯の表面を整え、しっかり乾かしてから封をしないと、詰め物の下に細菌を閉じ込めることになります。閉じ込められた細菌は内側で少しずつ増え、数年たってから、同じ場所の虫歯として現れるのです。

「昔治療した詰め物を外してみたら、下で虫歯が進んでいて、さらに大きく削ることになった」という経験をお持ちの方も少なくありません。
「くっついている」と「接着している」は違う
手のひらと手のひらを合わせただけの状態は、すぐに離れてしまいます。けれども指と指をしっかり組めば、簡単には離れません。歯と詰め物も同じです。表面がつるつるのまま貼り付けただけの「密着」は、時間がたつと境目にすき間ができやすくなります。
歯と詰め物の表面にごく細かい凹凸をつくり、そこに接着材を入り込ませると、指を組んだように強く結びつきます。これが「接着」です。テーブルにこぼした液体はすぐに拭き取れますが、じゅうたんにこぼすと細かい毛の間に入り込んで取れなくなるのと同じしくみです。


上の写真は、被せ物をした歯を色のついた液に浸し、断面を観察したものです。色を細菌に見立てると、境目の封鎖の違いで、細菌の入り込み方が大きく変わることが分かります。
くり返しを止めるために、確かめたいこと
同じ歯が何度も悪くなるのには、必ずその歯なりの理由があります。くり返しを止めるには、次の治療を決める前に、その理由を確かめることが大切です。
1. 詰め物と歯の「境目」から、細菌が入っていないか
治療した歯の再発は、多くの場合、詰め物と歯の境目から始まります。境目のわずかなすき間に細菌が入り込み、外からは見えないところで虫歯が進んでいくのです。
→ 再発が「詰め物との境目」から起こるしくみ(詳しい解説):https://www.kagawacsw.jp/2020/03/18/虫歯が何度も再発する原因/
2. その歯に、噛む力が集中していないか
咬み合わせのバランスが崩れていると、特定の歯に強い力がかかり続けます。力がかかると詰め物と歯の境目が少しずつ開き、そこから細菌が入りやすくなります。同じ歯ばかり悪くなる場合は、その歯に力が集中していることが少なくありません。
3. 削る量を抑えて治せないか
当院では、ごく微量の抗菌薬で虫歯の原因となる細菌を減らし、歯と詰め物の境目をすき間なく封鎖する「特殊接着封鎖技術」で、削る量を抑え、できる限り神経を残す治療を行っています。院長の吉本彰夫は、四国の開業医では唯一の接着歯学認定医です。
当院の特殊接着封鎖技術による治療の流れ

- ① 虫歯の部分を最小限だけ削り、抗菌薬を塗って、いったん封をします(仮の封鎖)
- ② 多くの方は、数日から1週間ほどで痛みが軽くなっていきます。痛みが引かない場合は、封鎖が十分でない、歯にひびがある、細菌の量が多い、神経の一部がすでに弱っている、といった可能性を考えて確かめます
- ③ 健康な歯をできるだけ残しながら、詰め物の形を整えます
- ④ 歯の表面を薬剤で処理し、しっかり乾かします(約15分)
- ⑤ すき間なく封鎖できる材質の詰め物・被せ物を、すばやく装着します


乾かし方ひとつにも理由がある

当院で治療を受けた方から「ここまで口の中が乾いたのは初めてです」と言われることがよくあります。お風呂場の鏡についた水滴を、あちこちから息を吹きかけて飛ばそうとすると、せっかく乾いたところにまた水滴が飛んでしまいますよね。鏡の端から一方向に順番に風を当てていけば、水滴はきれいに取れていきます。歯の乾燥も同じで、慌てず、一方向から、じっくりと乾かすことが、封鎖の確かさにつながります。
こうした処理を一つひとつ確実に行うため、一般的な治療に比べて、診療の時間は長くかかります。
向いている場合と、そうでない場合
この治療は、すき間なく封鎖できる材質を選べることが前提になります。また、虫歯の深さや細菌の広がりによっては、この方法が向かず、神経を取る治療が必要になる場合もあります。
封鎖がうまくいっても、歯そのものにひびが入ったり、咬み合わせが変わってその歯に強い力がかかったりすれば、歯が割れたり詰め物が外れたりすることはあります。治療のあとも、定期的な点検と、力から歯を守る対策が欠かせません。
特殊接着封鎖技術を使った治療は、すべて自由診療で行っています。現在の保険診療で認められている材料や接着の方法では、同じ処理を行うことが難しいためです。どの方法が合うかと費用は、検査の結果をお見せしたうえでご説明します。
→ 神経を残す虫歯治療(入口ページ):https://www.doctornet.jp/
こんな方は一度ご相談ください
- 同じ歯の治療を、何度もくり返している
- 詰め物が取れたり、欠けたりしやすい
- 治療した歯の詰め物を、何度も入れ直している
- 「次は神経を取りましょう」と言われた
- 神経を取った歯が何本もある
- 食いしばり・歯ぎしりを指摘されたことがある
ひとつでも当てはまる場合、くり返しの原因は歯みがきではなく、治療した歯の境目や、力のかかり方にある可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 歯は一度削ると元に戻らず、治療をくり返すたびに少しずつ薄くなる
✅ くり返しの先には、神経を取る治療、被せ物、歯の破折、抜歯がある
✅ 再発の多くは、詰め物と歯の境目から始まる
✅ 同じ歯ばかり悪くなる場合は、その歯に噛む力が集中していることがある
✅ 次の治療を決める前に、なぜくり返すのかを確かめることが大切
よくあるご質問
Q1. 同じ歯が何度も虫歯になるのは、歯みがきが悪いからですか?
歯みがきだけが原因とは限りません。詰め物と歯の境目のすき間や、その歯にかかる噛む力など、歯みがきでは防ぎにくい原因があることが少なくありません。どこに原因があるかは、検査で確かめることができます。
Q2. 詰め物をもっと丈夫な材料に変えれば、くり返さなくなりますか?
材料を変えることで改善する場合もあります。ただ、境目のすき間や力の集中といった原因が残っていると、よい材料でも同じことがくり返されることがあります。材料を選ぶ前に、原因を確かめることをおすすめします。
Q3. 痛みがなければ、そのままにしておいてもよいですか?
治療した歯の再発は、境目の内側で静かに進むため、痛みが出たときにはかなり進んでいることがあります。神経を取った歯では、痛みがほとんど出ないこともあります。気になる歯があれば、早めに状態を確かめてください。
Q4. 保険診療で、同じ治療を受けることはできますか?
特殊接着封鎖技術を使った治療は、すべて自由診療で行っています。現在の保険診療で認められている材料や接着の方法では、同じ処理を行うことが難しいためです。虫歯の深さや細菌の広がりによって向き不向きもあるので、検査の結果をお見せしたうえで、選べる方法と費用をご説明します。
Q5. 他の歯科医院で治療中ですが、相談してもよいですか?
はい。今の状態を検査でお見せし、ご自身で判断していただくための相談として受けていただけます。いきなり治療を始めることはありません。
治療のご相談は
「同じ歯の治療を、もうくり返したくない」「次は神経を取ると言われて迷っている」──そう感じておられる方は、次の治療を決める前に、なぜくり返すのかを一緒に確かめてみませんか。
当院では、パノラマレントゲンと咬み合わせの検査で今の状態をお見せしたうえで、選べる方法をご説明します。必要に応じてCT撮影(自費・22,000円税込、ご説明と同意のうえで撮影)も行います。
ネット予約(24時間受付):https://www.cieasyapo2.ci-medical.com/1967/step1
お電話:087-818-1118(受付 9:15〜17:00、水・日・祝日を除く)
執筆者
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物など)を専門分野として、日々の診療にあたっております。
医療法人社団吉翔会 吉本歯科医院 香川県高松市屋島西町1968-9 TEL 087-818-1118

香川県 高松市 噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫。歯学博士。放送大学講師。歯を削らない治療・歯を抜かない治療・咬み合わせ治療を軸に診療を行っている。


