歯ぎしりを「ただの癖」で終わらせないでください。すり減った歯に、この先起こりやすいことと、確かめておきたいこと
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「歯ぎしりは昔からの癖なので、仕方がないと思っていた」
「前歯が短くなってきたけれど、年齢のせいだと思う」
「痛くないので、特に何もしていない」
そのほとんどの方が「歯ぎしりは癖だから、困ったことになるまでは放っておいてよい」とお考えです。しかし実際に拝見すると、すり減りは静かに進み、気づいたときには歯や噛み合わせに大きな変化が起きていることが少なくありません。
長いあいだ歯ぎしりが続いてきた。それは、あなたのせいではありません。眠っている間の力は、ご自分の意思では止められないからです。これまでは、その力がこの先歯に何をもたらすのかを知る機会がなかっただけなのです。
この記事では、歯ぎしりやすり減りを放っておいたときに、歯に何が起こりやすいのかを、段階を追ってお話しします。
歯は、すり減っても元には戻りません
皮膚や骨は、傷ついても時間をかけて回復していきます。けれども、歯の表面のエナメル質は、一度すり減ると自然に元に戻ることはありません。
毎晩のわずかなすり減りでも、積み重なれば確実に歯は小さくなっていきます。しかも、すり減りは痛みをともなわずに進むことが多いため、ご本人が気づくのは、ある程度進んでからになりがちです。
だからこそ、「痛くないから大丈夫」ではなく、「今どこまで進んでいるか」を知っておくことが大切です。
すり減りが進むと、歯に起こりやすいこと
歯ぎしりによるすり減りは、次のような順番で進んでいくことが多いのです。
段階1:表面のエナメル質がすり減る
歯の先や山が平らになり、つやのある面ができます。この段階では、ほとんど症状はありません。
段階2:内側の象牙質が出てきて、しみる
エナメル質がすり減ると、その下の象牙質(ぞうげしつ)が出てきます。象牙質はエナメル質よりやわらかく、刺激が神経に伝わりやすいため、冷たいものがしみるようになることがあります。やわらかい分、すり減る速さも増していきます。
段階3:欠ける、ひびが入る
薄くなった歯の縁は、力に耐えられず欠けることがあります。目に見えないほどのひびが入り、噛んだときだけ痛むこともあります。
段階4:詰め物や被せ物が取れる・割れる
治療した歯では、詰め物や被せ物が外れたり、割れたりすることが増えてきます。くり返し付け直すうちに、歯そのものが少しずつ減っていきます。
段階5:噛み合わせの高さが下がる
多くの歯がすり減ると、上下の歯が噛み合ったときの高さが少しずつ低くなります。すると顎の位置が変わり、残っている歯への力のかかり方がさらに偏っていきます。
噛む力によって歯が欠けたり穴があいたりすることは、こちらで解説しています。
→ 歯に穴があいた、欠けた。それは本当に「虫歯」?
すり減りが進みやすい歯、進みやすい口の状態
同じように歯ぎしりをしていても、すり減りが早く進む方と、そうでない方がいます。次のような状態があると、力が一部の歯に集まりやすくなります。
- 奥歯を失ったままにしていて、前歯や残った歯で噛んでいる
- 噛み合う相手のいない歯がある
- 顎を横に動かしたとき、一本の歯だけが強くこすれる
- 神経を取った歯や、大きな詰め物の入った歯が多い
力が分散していれば、一本あたりの負担は小さくなります。反対に、力の逃げ場が少ないほど、特定の歯のすり減りや欠けが進みやすくなるのです。どの歯が力を受け止めているのかは、お口の中を拝見し、噛み合わせを調べることで見えてきます。
いちばん避けたいのは、歯の根が割れること
すり減りや欠けは、まだ歯を残せる段階です。けれども、力が歯の根にまで及び、根が割れてしまうと、その歯を残すことが難しくなる場合があります。
とくに、神経を取った歯は、もろくなっているうえに痛みという警報もありません。気づいたときには根まで割れていた、ということも起こりえます。
歯の根が割れたときのことは、こちらで詳しくお話ししています。
→ 歯根破折で「抜くしかない」と言われた方へ
神経を取った歯がもろくなる理由は、こちらにまとめています。
→ 歯の神経を取ると、歯に何が起こるのか
「年齢のせい」と決める前に
歯が短くなる、すき間ができる、しみる。こうした変化は、年齢のせいだと考えられがちです。
もちろん、年齢とともに歯や歯ぐきが変化することはあります。ただ、同じ年代でも、すり減り方には大きな差があります。その差を生んでいるもののひとつが、長年かかり続けてきた力です。
年齢のせいと決めてしまうと、力の問題はそのまま残ります。今のうちに、どの歯にどれだけ力がかかっているのかを確かめておくことで、この先の変化をゆるやかにできることがあります。
当院が、すり減った歯で確かめていること
吉本歯科医院では、歯ぎしりやすり減りのご相談を受けたとき、まず「今どの段階にあるのか」と「力がどこに集まっているのか」を確かめます。
歯と根の状態を確かめる
パノラマレントゲンで、歯の根や周りの骨の状態を確認します。ひびや根の状態をさらに詳しく見る必要があるときは、歯科用CTをおすすめすることがあります。歯科用CTは自費(22,000円・税込)で、ご説明して了承をいただいてから撮影します。
すり減り方と噛み合わせの高さを確かめる
どの歯がどのようにすり減っているか、噛み合わせの高さが下がっていないか、顎を動かしたときにどの歯がこすれるかを調べます。
分かったことをお見せする
調べて分かったことは、画像をお見せしながらご説明します。そのうえで、この先に備えて選べる方法をお話しします。
こんな方は一度ご相談ください
- 歯ぎしりを家族に指摘されたことがある
- 前歯が短くなった、歯の先が平らになってきた
- 冷たいものがしみる歯が増えてきた
- 歯の縁が欠けたことがある
- 詰め物や被せ物が取れたり、割れたりしたことがある
- 以前より、噛み合わせが低くなった気がする
- 神経を取った歯がある
ひとつでも当てはまる場合、歯ぎしりの力が、すでに歯に変化を起こしている可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 歯は、すり減っても元には戻らない
✅ すり減りは、表面のすり減り→しみる→欠け・ひび→詰め物が取れる→噛み合わせが低くなる、と進みやすい
✅ いちばん避けたいのは、力が歯の根に及んで根が割れること
✅ 「年齢のせい」と決めると、力の問題がそのまま残る
✅ 今どの段階にあるのか、力がどこに集まっているのかを検査で確かめることが大切
よくあるご質問
Q1. 歯ぎしりは、昔からの癖なので治らないのでしょうか?
眠っている間の歯ぎしりは、ご本人の意思では止められません。ただ、その力がどの歯にどのくらいかかっているのかを確かめることで、歯への影響を考えることはできます。癖だからとあきらめる前に、一度状態を確かめてみてください。
Q2. すり減った歯は、元に戻せますか?
すり減った歯が自然に元に戻ることはありません。どこまで進んでいるか、なぜすり減っているのかによって、考えられる方法は変わります。まず今の段階を検査で確かめることが大切です。
Q3. 痛くないので、このままでも大丈夫ですか?
すり減りは、痛みをともなわずに進むことが多いのです。痛みが出たときには、欠けやひびが起きていることもあります。痛みのないうちに状態を確かめておくと、選べる方法が広がります。
Q4. マウスピースを使えば、すり減りは止まりますか?
マウスピースが役に立つ場合もありますが、それだけで力の問題が解決するとは限りません。力がどの歯に集まっているのかによって、考えるべきことが変わります。使うかどうかは、検査で状態を確かめてから一緒に考えます。
Q5. 検査では、どんなことをしますか?
初診では、パノラマレントゲンと咬み合わせの確認を行います。さらに詳しく見る必要があるときは歯科用CTをおすすめすることがありますが、CTは自費(22,000円・税込)で、ご説明して了承をいただいてから撮影します。検査の内容と費用は、事前にご説明します。
治療のご相談は
「歯ぎしりは癖だから仕方がない」「すり減ってきたけれど、痛くないから」──そう感じておられる方は、今どの段階にあるのか、力がどこに集まっているのかを、一度確かめてみてください。
当院では、パノラマレントゲンと咬み合わせの検査で今の状態をお見せしたうえで、選べる方法をご説明します。
ネット予約(24時間受付):https://www.cieasyapo2.ci-medical.com/1967/step1
お電話:087-818-1118(受付 9:15〜17:00、水・日・祝日を除く)
執筆者
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物など)を専門分野として、日々の診療にあたっております。
医療法人社団吉翔会 吉本歯科医院 香川県高松市屋島西町1968-9 TEL 087-818-1118

香川県 高松市 噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫。歯学博士。放送大学講師。歯を削らない治療・歯を抜かない治療・咬み合わせ治療を軸に診療を行っている。


