詰め物や被せ物が、何度も同じところから取れる。付け直す前に確かめたい「その歯にかかっている力」
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「付け直してもらったのに、また同じ歯の詰め物が取れた」
「接着剤を替えてもらったけれど、半年ほどでまた外れた」
「取れるたびに少しずつ削られて、歯が小さくなっていく気がする」
そのほとんどの方が「接着剤が弱いのだろう」「もっと丈夫な材料に替えれば取れなくなるはずだ」とお考えです。しかし実際に拝見すると、原因が接着そのものではなく、その歯にかかっている力にあることが少なくありません。
何度付け直しても取れてしまう。それは、あなたのせいではありません。食べ方が悪かったからでも、歯の質が悪いからでもありません。これまでは、詰め物が取れたという結果だけが扱われ、なぜその歯だけに負担が集まっているのかが確かめられていなかった可能性があるのです。
この記事では、詰め物や被せ物が同じところから繰り返し取れる理由を、「くっつき方」と「力の向き」からお話しします。
取れた詰め物は「壊れた」のではなく「知らせている」
詰め物や被せ物が外れると、多くの方は「失敗した」「運が悪かった」と受け止められます。けれども、同じ接着剤で付けたほかの歯は何年も外れずにいることが多いのです。それなのに、ある一本だけが二度、三度と外れる。
これは、接着の性能に差があるというより、その一本にだけ接着が受け止められる以上の力がかかっている、と考えるほうが自然です。
外れた詰め物は、その歯が限界に近いことを先に知らせてくれた部品だと言えます。理由を確かめずに同じように付け直せば、力の行き先は変わらないため、同じことがくり返されやすくなります。
詰め物や被せ物は、どうやって歯にくっついているのか
詰め物や被せ物は、ネジや釘で留まっているわけではありません。削って整えた歯の面と、詰め物の内側の面。この二つが、ごく薄い接着剤の層をはさんで向かい合っています。
床に貼ったタイルを思い浮かべてください。上から踏まれても割れたりはがれたりしにくいのに、横から何度も蹴られたり、端に物を引っかけられたりすると、目地からはがれてきます。詰め物も同じで、
- 真上から押される力には、比較的強い
- 横にずらされる力には、弱い
- 端から持ち上げられる力には、さらに弱い
という性質を持っています。つまり、取れやすいかどうかは「接着剤の強さ」だけでなく、「どの向きから、どれだけの力がかかるか」で大きく変わるのです。
横からの力が、特定の歯に集まる3つのきっかけ
本来、噛む力は多くの歯に分かれて受け止められます。ところが、次のようなことが重なると、一本の歯に横向きの力が集まりやすくなります。
寝ている間の食いしばり・歯ぎしり
眠っている間の食いしばりや歯ぎしりは、食事のときよりも長く、強く、横に歯をこすり合わせることがあります。ご本人には自覚がないことがほとんどです。朝、顎がだるい、歯がすり減ってきたと感じる方は、この影響を受けている可能性があります。
抜けたままの歯、噛み合う相手のいない歯がある
奥歯を失ったままにしていると、そこで受け止めていた力が残っている歯に回ります。また、噛み合う相手のいない歯は少しずつ伸びたり傾いたりして、まわりの歯の当たり方を変えてしまいます。
その歯だけ、高さや形が周りと合っていない
顎を左右に動かしたとき、特定の歯だけが強くこすれることがあります。わずかな差でも、毎日何千回とくり返される動きなので、その歯の接着の層は少しずつ傷んでいきます。
いずれも、鏡を見ただけでは分かりません。気づく機会がなかったのは当然のことです。
取れる、欠ける、割れる──力の逃げ道には順番がある
「それなら、もっと硬くて丈夫な材料にすればいい」と考えたくなるところです。けれども、力そのものが減っていない以上、その力はどこかが受け止めることになります。詰め物が丈夫になれば、次に弱いところが負担を引き受けます。
- 接着の層:浮く、外れる
- 残っている歯の壁:欠ける、ひびが入る
- 歯の根:割れる(歯根破折)
- 歯を支える骨:揺さぶられて、少しずつ痩せていく
この順番で考えると、外れてくれるのはまだ軽いほうです。外れずに歯が割れてしまうと、その歯を残せなくなることもあります。「よく取れる」という段階で気づけたのは、むしろ早いほうだとも言えるのです。
歯の根が割れることについては、こちらの記事で詳しくお話ししています。
→ 歯根破折で「抜くしかない」と言われた方へ
付け直しをくり返すと、歯に起こること
外れたものを付け直すときには、古い接着剤を落とし、欠けた縁を整える作業が入ることがあります。一回ごとに削る量はわずかでも、くり返せばその分だけ歯は減っていきます。
歯は、削られた分が元に戻ることはありません。壁が薄くなるほど力に弱くなり、さらに外れやすくなる。この循環に入ると、いずれ「次は神経を取りましょう」「被せ物にしましょう」という段階に進みやすくなります。
また、完全に外れる前に一部だけが浮いていると、詰め物と歯の「境目」にすき間ができ、そこから虫歯が再発することもあります。
境目から虫歯が再発するしくみは、こちらで解説しています。
→ 治した歯がまた虫歯に。同じ場所で再発する原因は「詰め物との境目」にあります
削って詰めるをくり返した歯に起こることは、こちらにまとめています。
→ 同じ歯を何度も治療していませんか
当院が、付け直す前に確かめていること
吉本歯科医院では、「詰め物が取れた」というご相談を、すぐに付け直して終わりにはしていません。取れたという事実を、その歯に何が起きているかを知る手がかりとして扱います。
歯と根の状態を確かめる
パノラマレントゲンで、歯の根の状態や、周りの骨の減り方を確認します。ひびや根の状態をさらに詳しく見る必要があるときは、歯科用CTをおすすめすることがあります。CTは自費(22,000円・税込)で、ご説明して了承をいただいてから撮影します。
今、どこで噛んでいるかを確かめる
噛んだときにどの歯から当たるのか、顎を動かしたときにどの歯がこすれるのかを調べます。外れた一本だけでなく、反対側の歯や、噛み合う相手の歯も見ます。力の話は、一本だけを見ていても分からないためです。
分かったことを、そのままお見せする
調べて分かったことは、画像をお見せしながらご説明します。そのうえで、選べる方法をお話しします。何を付けるかを決めるのは、それからでも遅くありません。
こんな方は一度ご相談ください
- 同じ歯の詰め物や被せ物が、2回以上取れたことがある
- 接着剤や材料を替えたのに、また外れた
- 取れるまでの期間が、だんだん短くなっている
- 詰め物の縁が欠けている、歯にひびのような線が見える
- 朝起きたとき顎がだるい、歯ぎしりを指摘されたことがある
- 抜けたままの歯や、噛み合う相手のいない歯がある
- 特定の歯だけ、噛むと当たりが強い気がする
ひとつでも当てはまる場合、原因は接着剤や材料ではなく、その歯にかかっている力にある可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 詰め物や被せ物は、面と面が薄い接着の層でくっついている。真上からの力には強いが、横からの力には弱い
✅ 同じ歯ばかり取れるのは、その歯に横向きの力が集まっているサインと考えられる
✅ 食いしばり・歯ぎしり、抜けたままの歯、高さの合わない歯が、力を集めるきっかけになる
✅ 材料を丈夫にしても力は減らず、次は歯の壁や根が負担を受ける
✅ 付け直す前に、なぜその歯に力が集まるのかを検査で確かめることが大切
よくあるご質問
Q1. もっと強い接着剤を使えば、取れなくなりませんか?
接着剤の種類によって、くっつく強さに差があるのは確かです。ただ、同じ歯だけが何度も外れる場合は、接着の強さを上回る力がその歯にかかっていると考えられます。接着を強くしても、今度は歯の壁や根が力を受けることになりかねません。まず、その歯に力が集まっている理由を検査で確かめることをおすすめします。
Q2. 取れた詰め物は、自分で付け直してもよいですか?
市販の接着剤などで付け直すのはおすすめしません。すき間に汚れが残ったまま付くと、中で虫歯が進むことがあります。また、取れた理由が分からないままになってしまいます。外れた詰め物は捨てずに持ってきてください。外れ方も、原因を考える手がかりになります。
Q3. 取れたまま、しばらく様子を見ても大丈夫ですか?
痛みがなくても、詰め物が外れた歯は表面がむき出しの状態です。しみたり、欠けたり、虫歯が進んだりしやすくなります。また、噛み合う相手がいない状態が続くと、歯が動いて噛み合わせが変わることもあります。なるべく早めにご相談ください。
Q4. 検査にはどのくらい時間や費用がかかりますか?
初診では、パノラマレントゲンと咬み合わせの確認を行います。さらに詳しく見る必要があるときは歯科用CTをおすすめすることがありますが、CTは自費(22,000円・税込)で、ご説明して了承をいただいてから撮影します。検査の内容と費用は、事前にご説明します。
Q5. いまは別の歯科医院に通っています。相談だけでもよいですか?
はい。ご自身で判断していただくためのご相談として受けていただけます。今の状態を検査でお見せしたうえで、考えられる原因と選べる方法をご説明します。その場で治療を始めることはありませんので、安心してご相談ください。
治療のご相談は
「また同じところが取れた」「次は削って被せると言われた」──そう感じておられる方は、次に何を付けるかを決める前に、なぜその歯にだけ負担が集まっているのかを確かめてみてください。
当院では、パノラマレントゲンと咬み合わせの検査で今の状態をお見せしたうえで、選べる方法をご説明します。
ネット予約(24時間受付):https://www.cieasyapo2.ci-medical.com/1967/step1
お電話:087-818-1118(受付 9:15〜17:00、水・日・祝日を除く)
執筆者
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物など)を専門分野として、日々の診療にあたっております。
医療法人社団吉翔会 吉本歯科医院 香川県高松市屋島西町1968-9 TEL 087-818-1118

香川県 高松市 噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫。歯学博士。放送大学講師。歯を削らない治療・歯を抜かない治療・咬み合わせ治療を軸に診療を行っている。


