強く噛んでいないのに、歯がしみる・詰め物が取れる。気づかないうちに続く「上下の歯の接触」(TCH)
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「歯ぎしりはしていないと言われたのに、朝から顎がだるい」
「強く噛んだ覚えはないのに、詰め物がよく取れる」
「ふと気づくと、上下の歯が当たっていることがある」
そのほとんどの方が「自分は強く噛みしめてなどいない」とお考えです。しかし実際に拝見すると、強い力ではなく、弱い力で長い時間、上下の歯が触れ合ったままになっていることが少なくありません。
思い当たる強い力がないのに、歯が傷んでいく。それは、あなたのせいではありません。歯の質が弱いからでも、歯みがきが足りないからでもありません。上下の歯が「触れている時間の長さ」という見えにくい負担が、これまで確かめられていなかった可能性があるのです。
この記事では、TCH(歯列接触癖=しれつせっしょくへき)と呼ばれる状態について、なぜ弱い力でも歯を傷めるのかをお話しします。
口を閉じているとき、上下の歯は離れているのが普通です
意外に思われるかもしれませんが、唇を閉じて楽にしているとき、上下の歯は触れていないのが本来の状態です。歯と歯のあいだにはわずかなすき間があり、舌は上あごに軽くふれています。
上下の歯がしっかり触れるのは、食べ物を噛むときと、飲み込むときくらいです。一日のうちで合わせても、それほど長い時間ではありません。
歯や、歯を支える骨、顎の関節は、ほとんどの時間を「休む」ことを前提にできている、と考えると分かりやすいかもしれません。
TCH(歯列接触癖)とは、どんな状態か
TCHは、本来離れているはずの時間に、上下の歯が触れ合ったままになっている癖のことです。ぎゅっと噛みしめているのではなく、軽く当たっているだけです。
力が弱いので、ご本人はまず気づきません。「言われてみれば、今も当たっていました」と、指摘されてはじめて気づかれる方がほとんどです。
起きやすい場面
- パソコンやスマートフォンの画面を見ているとき
- 車を運転しているとき
- 家事や細かい作業に集中しているとき
- 考えごとをしているとき
どれも、何かに集中している時間です。気持ちが別のところに向いているあいだ、歯は休めずにいることになります。
また、歯が触れているあいだは、顎を閉じる筋肉も少し働き続けています。夕方になると顎や首、肩が疲れるという方の中には、この状態が一日のあいだ続いている方もいらっしゃいます。
癖そのものは、悪いことをしているわけではありません。ただ、続いている時間が長いほど、歯や顎にとっては休む時間が短くなります。
弱い力でも、長く続けば負担は積み重なります
「軽く触れているだけなら、問題ないのでは」と思われるかもしれません。けれども、歯や骨にとって大事なのは、力の強さだけではありません。その力が「どれだけ長く」かかっているかも、負担を大きく左右します。
重い荷物を一瞬持ち上げるより、軽い荷物を何時間も持ち続けるほうが、腕は疲れます。歯も同じで、弱い力でも休みなく続くと、
- 歯の表面がすり減る、細かいひびが入る
- 歯の根元がえぐれて、しみやすくなる
- 詰め物や被せ物の接着が、少しずつ傷む
- 歯を支える骨や、顎の関節・筋肉が疲れる
といった変化が、ゆっくり起きることがあります。
歯の根元がえぐれたり、欠けたりすることについては、こちらで解説しています。
→ 歯に穴があいた、欠けた。それは本当に「虫歯」?
寝ているあいだの歯ぎしりとは、別のものです
TCHは、主に起きているあいだの癖です。寝ているあいだの食いしばりや歯ぎしりとは別のもので、両方を持っている方もいらっしゃいます。
「歯ぎしりはしていないと言われた」という方でも、日中のTCHが続いていることがあります。逆に、日中に気をつけていても、夜の噛む力が強い方もいます。どちらが、どの程度かかっているのかは、歯のすり減り方や当たり方を見て確かめる必要があります。
夜の噛む力で歯に亀裂が入った方のお話は、こちらです。
→ 奥歯で噛むと激痛。歯に亀裂を入れたのは「夜の噛む力」でした
気づくことは大切。でも、それだけで終わりにしない
TCHは癖なので、「今、歯が当たっている」と気づく回数が増えると、少しずつ減っていくことがあります。目に入る場所に小さな印を貼り、見るたびに上下の歯を離して力を抜く、といった方法がよく知られています。
ただ、これはあくまで日々の対処です。長いあいだ歯が触れ続けていた方では、すでに歯のすり減りやひび、詰め物のゆるみ、骨の変化が起きていることがあります。また、咬み合わせの形そのものが、歯が当たりやすい状態になっていることもあります。
癖に気をつけることと、今の歯の状態を確かめることは、別のことです。どこまで変化が進んでいるのかを、一度確かめておくことをおすすめします。
とくに、詰め物が何度も取れる、同じ歯ばかりしみるといった症状がある場合は、その歯に力が集まっているサインかもしれません。
詰め物がくり返し取れることと力の関係は、こちらで解説しています。
→ 詰め物や被せ物が、何度も同じところから取れる
当院が、TCHのご相談で確かめていること
すでに起きている変化を確かめる
歯のすり減り、ひび、しみる場所、揺れ、詰め物のゆるみを確認します。パノラマレントゲンで、歯を支える骨の状態も見ます。骨や関節をさらに詳しく見る必要があるときは、歯科用CTをおすすめすることがあります。歯科用CTは自費(22,000円・税込)で、ご説明して了承をいただいてから撮影します。
力がどこに集まっているかを確かめる
噛んだときにどの歯から当たるのか、顎を動かしたときにどの歯がこすれるのかを調べます。特定の歯に力が偏っていれば、癖だけの問題ではないことが分かります。
分かったことを、お見せしてご説明する
調べた結果を画像でお見せしながら、何が起きていて、何を優先すればよいのかをご説明します。
こんな方は一度ご相談ください
- 気づくと、上下の歯が触れている
- 舌のふちや頬の内側に、歯の跡がついている
- 詰め物や被せ物が、くり返し取れる
- 虫歯はないと言われたのに、しみる歯がある
- 朝起きたときや夕方に、顎やこめかみがだるい
- 歯ぎしりはしていないと言われたが、歯がすり減っている
- パソコン作業や運転など、集中する時間が長い
ひとつでも当てはまる場合、原因は強い力ではなく、歯が触れている「時間の長さ」にある可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 口を閉じて楽にしているとき、上下の歯は離れているのが本来の状態
✅ TCHは、弱い力で上下の歯が触れ続ける癖。ご本人は気づかないことが多い
✅ 弱い力でも長く続けば、歯・骨・関節への負担は積み重なる
✅ 夜の歯ぎしり・食いしばりとは別のもので、両方ある方もいる
✅ 気づくことは大切だが、すでに起きている変化を検査で確かめることが次の一歩
よくあるご質問
Q1. 軽く触れているだけでも、本当に歯に悪いのですか?
力そのものは弱くても、触れている時間が長いと、歯や骨、顎の関節が休めなくなります。すり減りやしみ、詰め物のゆるみといった形で表れることがあります。ただし、どの程度影響しているかは人によって違いますので、今の歯の状態を検査で確かめてから判断するのがよいと考えています。
Q2. 自分にTCHがあるかどうか、どうすれば分かりますか?
何かに集中しているとき、ふと上下の歯が触れていないか確かめてみてください。舌のふちや頬の内側に歯の跡がついている場合も、手がかりになります。ただ、ご自身で気づけるのは一部です。歯のすり減り方や当たり方を見ると、力がかかっている場所が分かることがあります。
Q3. マウスピースを作れば、治りますか?
マウスピースは、主に寝ているあいだの歯を守るために使うことが多いものです。日中のTCHは癖なので、マウスピースだけで止まるとは限りません。まず、今どの歯に力が集まり、どんな変化が起きているのかを確かめてから、必要なことをご説明します。
Q4. 放っておくと、どうなりますか?
すぐに大きな問題になるとは限りませんが、歯のすり減りやひび、詰め物の外れ、しみる症状などが、少しずつ進むことがあります。骨やすり減った歯は、元に戻りにくいものです。気になる症状があれば、早めに一度ご相談ください。
Q5. 相談したら、すぐに歯を削られたりしませんか?
初めてのご相談では、検査で今の状態を確かめ、分かったことをご説明するところから始めます。その場で歯を削ったり、治療を始めたりすることはありません。ご説明を聞いたうえで、ご自身で判断していただければと思います。
治療のご相談は
「強く噛んでいないのに歯が傷む」「詰め物がよく取れる」──そう感じておられる方は、上下の歯が触れている時間と、今の歯の状態を一度確かめてみてください。
当院では、パノラマレントゲンと咬み合わせの検査で今の状態をお見せしたうえで、選べる方法をご説明します。
ネット予約(24時間受付):https://www.cieasyapo2.ci-medical.com/1967/step1
お電話:087-818-1118(受付 9:15〜17:00、水・日・祝日を除く)
執筆者
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
咬み合わせと補綴(入れ歯・被せ物など)を専門分野として、日々の診療にあたっております。
医療法人社団吉翔会 吉本歯科医院 香川県高松市屋島西町1968-9 TEL 087-818-1118

香川県 高松市 噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫。歯学博士。放送大学講師。歯を削らない治療・歯を抜かない治療・咬み合わせ治療を軸に診療を行っている。


